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■Report-33 聖夜

 その日、俺は確かに酔っていたんだろう。
 毎年の様に24日は夜勤に回されていたのだが、今年は運良く日勤だった。
 これまた運良くなのか、俺はその日、大きな事件を抱えていなかった。なのですっきり退庁だ。
 だが、それが本当に運良くだったのかどうかはわからない。
 所詮、俺はクリスチャンでもない日本人で、クリスマスとは無縁だからだ。
 俺の職場は駅に近い。窓から外を見れば、11月も末から街路樹はイルミネーションで光り輝き、12月に入ってからは飲食店がクリスマスな装飾で彩られた。街行く人も、楽しげに見える。
 まっすぐ寮に帰ってもすることはないし、かといってその後の予定もない。そう考えること自体、俺も街の空気にのまれていたということなんだろうが、このときはそう思わなかった。
 だから、現在コンビを組んでいる野本や、時間を持て余した他の刑事課の連中何人かとわざわざ呑みに行ったんだ。もちろん、独身連中で。
 そこでの話題といえば、署内の諸々や日頃の仕事の話、上司の愚痴、移動した連中のこと等。
 その中には、昨年俺と組んでいた大守の話もあった。奴ときたら、いつの間にか美人の彼女なんかいたりしたもんだから(2月の事件でその彼女の姿を見た奴は多い)一時期奴のネタで持ちきりになったんだった。
 まあ、奴の浮かれっぷりから彼女ができたことは皆わかっていたんだが(あまり語らん奴だが特に隠していた様子でもなかった)、あんな美人じゃ浮かれるのもわかるよなって話。どこで知り合ったか等は聞いても適当にはぐらかされてしまうんだが、皆に隠したいほど変な出会い方したのかね。まあ、奴の周りには変わった人間が集まっているような気もするし(生肉プレセントの女子中学生とか日向ちゃんとか)、あまり普通じゃなくても驚かないつもりなんだけどな。
 それはそれとして、大守はその彼女とまだ続いているのかってことを、皆して俺に質問してきやがった。
 確かに、俺は今でも奴とは時間が合うときは飲みに云ったりしているしな。本庁での出来事を聞いたり、奴のノロケ話にも付き合ってやってるし。それでも、かなり付き合いは悪くなったと思う。所詮、所帯を持つと皆付き合いが悪くなるんだよな。学生時代の友人たちとは、そもそも時間が合わないんで、付き合いもほとんどないんだけど。元気にやってんのかな。
 そんなんで、大守が春には結婚をするらしいって話をしたら、皆して黙っちまいやがった。まあね、警察は男社会だしな。それに時間も融通利かないし。なかなか都合よく行かない訳よ。まったく羨ましい奴だ。てか、会うたびにノロケ話(本人にはそのつもりは無さそうだけど)を聞かされる俺の身になってみろってんだ。なんか思い出したら腹立ってきたぞ。くそ。
 とかなんとかうだうだ話をするだけして、朝が早い連中に合わせて適当な時間に店を出たわけだ。健康的な生活だよ、まったく。……ずいぶん酒は入れた気もするが。

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