-- Interval
「でさ、隼人さんは何で阿月さんが好きなワケ?」
放課後のエクリプス財団受付ロビー。そこで風間隼人(かざま・はやと)は三条和真(さんじょう・かずま)に勉強を教えていた、はずなのだが。
「……」
どこをどう間違ったのか恋話になっていた。
「ねえねえ、なんで〜?」
だから嫌だったんだと隼人は溜息をつく。
「教えてくれないと本人に言っちゃうけど」
「う……」
「いいのかな〜。せっかく地道に勉強教えてあげたりしてポイント稼いでいたのに」
「いや、俺が教えられるのって物理だけだし」
大学に入った途端に受験のテクニックなんて忘れてしまった上に、阿月の飲みこみが早いせいで自分の得意科目すらそろそろ危ういのだが。
「指をくわえて見ているうちに他の男に掻っ攫われていくかもしれないな〜」
「誰に?」
「阿月さんの高校って確か共学だったよな〜」
「うう……」
「エージェントの私生活って秘密だから、実は彼氏とかいたりして」
「そうかもしれない……」
なんか中学生に負けている自分も情けないと思いながら、隼人は机にのの字を書く。
「だからここで味方を作っておくとお買い得!!南にも言えば間違いなく面白がって応援してくれるって」
「人の恋路で遊ぶだけじゃないかぁぁぁっ!!」
-- Dialogue9
死んでから気付いても遅すぎるけど、
ケジメはつけないといけないから
「ほら、早よ来んかい。人を殺すっちゅうことは自分も殺されるっちゅうことやねんからな」
夜の新宿御苑。無数とも思えるほどにいた霊達は既に消え、残っているのは二人の少女と巨大イタチのみ。
「来ぉへんのやったらこっちから行くで」
阿月が少女達に向かって一歩踏み出す。
「わ、私たちは悪くないわ!!」
怯えた声で少女達が叫び、阿月の周りを猛スピードで回り出す。
「バカの一つ覚えかいな」
「何言ってるの!!私たちのスピードに付いて来られないくせにっ!!」
「なんや、分かってなかったんか?」
薄く笑い、阿月はしゃがんで足を突き出す。
「きゃぁぁぁぁっ!?」
突き出された足は見事に少女の足を絡ませ、少女はバランスを崩して前につんのめる。その背中に踵が叩きつけられ、少女は動かなくなった。
「せやからアホやて言うたんやないか」
そのセリフを言い終えるや否やもう一人の少女に拳を叩き込み、そのすぐ後ろにいた巨大イタチが蹴りを繰り出そうとしているのを見て、
「!!」
そのまま吹き飛ばされた。